かつて私が望んだ結末は、自分ではどうにも出来ない未練をダイゴさんに断ち切らせて叶わぬ恋を思い出にする事だった。けれど一晩で迎えられなかった結末はいつの間にか深い欲に塗れ、いつしかおとぎ話のような幸せで最高の結末を望んでいた。
ダイゴさんが誤解を解き、私に興味を持って、特別な感情を抱いて、この先も二人で幸せな時間を過ごしたい――そう願ってしまった。そんな未来、絶対に来ないと分かっていた筈なのに、いつの間にかそんな未来を信じていた。
今目の前に伸びる道は、地獄の門へと続いている。もし欲を出さずあの夜に終わらせていたら、今頃どんな気持ちだったんだろう。答えの出ない問いを繰り返しては、何をどうしたところで地獄の門へと続いていたのだろうと諦めの色に染まった溜め息を力なく吐いていた。
〝ツワブキダイゴの恋人〟という偽りの称号を得た数日後、私は彼に呼ばれてルネのレストランへやって来ていた。
「大勢の前で言ったからさ、ちゃんと恋人らしい姿を見せないといけないだろう?」
ダイゴさんは今までと変わらず上品な笑みを浮かべていた。私も真似をして口角を上げてみたけれど笑顔には程遠かった。私は笑顔を諦めダイゴさんに問う。
「ああ、そうだね……{{kanaName}}が誰かを好きになるまで、かな」
この関係はいつまでと尋ねたらダイゴさんは眉を寄せ、ちらりと視線を向けたかと思ったらすぐさま目を逸らした。けれどもう一度こちらへ顔を向けた時には一瞬見せた憂いを消して、何事もなく笑っていた。力強い眼差しはダイヤモンドよりも輝き、瞳の中に写る私は一層みすぼらしく見えた。
笑顔が痛い。ダイゴさんは、私が依然として思い出作りに勤しんでいると思っている。私が心を変えて――心に正直になって結ばれたいと願ってるなんて夢にも思っていまい。
私の心はダイゴさんで溢れ、ダイゴさん以外の誰かを好きになるなんて考えられないのに、その気持ちは一番届いてほしい人には届かない。
「勿論その時はきみが不名誉を被らないようにするから、安心して」
うまく笑えない私をどう思ったのか、優しくあやすような声でそう付け加える。的外れな配慮に小さく頷く。そんな心配、言われるまで全く考えていなかった。
「ボクは{{kanaName}}に幸せになってほしいからね」
本当にそう思ってくれるなら、もっと私を見てほしい。上辺だけの言葉じゃなく、その鋭い眼差しで心の奥まで覗いてほしい。バトルの時に相手の心理を読むように、私の気持ちも感じ取ってほしい。
ダイゴさんなら出来る筈なのに、なのにどうして、私の想いは伝わらないのだろう。
「ボクだけが笑ってるなんて許されないだろう? きみにも幸せになってほしいんだ」
どこか遠い目が、うっすらと私を瞳に映す。
ああ、そうか。そういう事だったんだ。愚鈍な私でも流石に気付いてしまった。
ダイゴさんには好きな人がいる。だから私の気持ちに見て見ぬ振りをしている。今までの恋人ごっこもその人と付き合った時に失敗しない為で、頑なに好きと言わなかったのもこれ以上私が勘違いして執着しない為、だろう。
気付いた真実が胸を抉る。浮かんだ涙を誤魔化すようにフォークを口へ運んで「私にはちょっと辛いです」零れそうな涙を香辛料のせいにした。
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