Twinkle

ダイゴと付き合ってる夢主
星を見に誘われる

 星が綺麗だから、なんて理由で女の子を呼び出せるのはダイゴさんくらいだろう。そして一緒に見ようと言われたらたとえ明日が早起きだろうと何だろうとダイゴさんを優先にするのがわたしという人間で、電話を切るとパジャマからお気に入りのワンピースに大急ぎで着替えた。少し背伸びしたそのワンピースはきっと真夜中でもわたしを綺麗にしてくれる、くるりと回って揺れる裾にそんな願いを込めた。

***

 トクサネの夜はとても静かだ。明かりも他の大きな街に比べて少なく、空を見上げれば沢山の星がキラキラと瞬いている。そしてそれは今わたしの隣で星を眺めるダイゴさんの瞳の中でもチカチカと煌めいている。
「へっくしゅ」
 春とはいえまだ夜は肌寒く、オシャレは我慢が大事だと寒さに平気な振りをしていたわたしはしかし見事にクシャミをひとつ、それからぶるりと体を震わせてしまった。
「まったく、」
 いつも石だポケモンだしか言わないダイゴさんのくせにこういう時だけは格好良くて、わたしは一瞬たりともダイゴさんから目が離せない。ダイゴさんはしごく当然のように着ていたジャケットを脱いでわたしに羽織らせた。それほど大きいとは思わなかったジャケットは、わたしに掛けられた途端に大きくなって。ダイゴさんて男の人なんだと改めて実感して、照れと恥ずかしさと気まずさで今にも心が暴れ出しそうでわたしは瞳を瞼の裏に隠して拳を強く握りしめた。
 真っ暗になったわたしの世界には寄せては返す潮騒の音が響いて海に包まれたような感覚になり、しかし吸い込んだ空気を満たすのは潮の香りではなく隣で相変わらず星空を眺めるその人の香り。ジャケットに残る温もりと匂いはまるでダイゴさん本人に抱かれているような錯覚さえ起こし、わたしは逃げ場を失いたまらず目を開ける。
「星は逃げやしないけど、こんなに綺麗に見えるのも珍しいからよく見ておいたらいいと思うよ」
 眠いかもしれないけど。くすりと笑うダイゴさんの瞳に映り込む星が瞬く。わたしは決して眠いわけではなくて、ダイゴさんに酔ってしまったんだと口を開く。けれど肺を満たす愛しい人の香りがわたしの可愛げのない口を閉ざした。

***

 それから特に言葉を交わすこともなくただ星を眺めていた。借りていたジャケットも持ち主の温もりを失った頃、「さすがにもう遅い時間だね」ダイゴさんが少し残念そうな声でそう言った。
「ジャケット、ありがとう…ございます」
 返すとわたしを包んでいたダイゴさんの匂いは薄れていった。勿体ないな、なんて思っていたらダイゴさんが困った顔でジャケットを見つめていて。何かまずいことでもあったかと慌てていたら、
「此処に君が残っているから、何だか帰してしまうのが惜しくなってしまってさ」
 そんな事を恥ずかしげもなく言われてしまって。
「でも今日はこれで我慢するしかないか」
 くらりとしたのはきっと星空があまりにも綺麗に輝いていたから。わたしは何か言いたげにこちらを見つめるダイゴさんの甘い誘惑から逃げるように空を仰いだ。澄んだ空に見える星々はため息が出るほど美しかった。