コンビニ店員夢主と常連ダイゴ
週に1回、時間は朝の7時半、決まってその時間にコンビニにやってくるお客さんがいる。その人は仕立ての良いスーツを華麗に着こなし、すごく良い香りを漂わせて買い物をしていく。その人は来る度に色んな商品に挑戦しているようで、いつも買うものが違っていた。けれど毎回チョコレートだけは同じものを買っていて、わたしは勝手にチョコ王子とあだ名をつけて彼が来店するのを楽しみにしていた。 チョコ王子なんてあだ名を付けているけどあの人が買うチョコレートは20円程度の駄菓子のそれ一つで、チョコ王子と呼ぶには心もとない。だから他のバイト仲間と話をする時は週一のお兄さんと呼んでいる。イケメンって言わないのはその言葉で興味を持たれてわたしがシフトに入れなくなったら困るから、わたしの癒しタイムは誰にも邪魔されたくない。 「いつもありがとうございます」 レジに並ぶチョコ王子がわたしを見て微笑んだ。いらっしゃいませの挨拶からありがとうに変えたのは2週間前、最初は少し驚いた顔をされたけど王子の方もわたしを認識してくれているようで、朝の陽射しに負けないきらめく笑顔を返してくれた。朝からこんなイケメンを拝めるなんて、わたしは最高にツいている。 今日の王子は何を買ったのかというと、玉子のたっぷり入ったサンドウィッチにブラックコーヒー、それから、 「あれ、チョコがない…」 今までそんな事がなかったものだから、思わず声が漏れていた。しまった、詮索するようなこと言ってしまった。慌てて口を抑えるけれどそれなりの声量で呟いたそれはしっかりと聞こえていたようで、チョコ王子を苦笑いさせてしまった。 「もう買う必要がないからね」 チョコ王子は何だか嬉しそうに笑っていて、理由はさっぱりだけど今までで一番素敵な笑顔を見れたから、わたしも思わず口角を上げていた。