なぜ彼は連絡先を渡さなかったのか

コンビニ店員夢主と常連ダイゴ

 習慣なんてちょっとしたことで簡単に大きく変わってしまうもので、つい昨日までよく見かけた人が次の日から全く姿を見せない事もちっとも珍しいことではなかった。
 それはあのチョコ王子もといダイゴさんだって同じわけで、偶然ばったりとコンテスト会場で出会したあの日以来、さっぱり姿を見せなくなっていた。最近ではダイゴさんに会うために極力シフトも入れたというのになんてタイミングが悪いんだろう。あの人イケメンだしいかにも仕事が出来ますって感じだから、もしあの日の時点でいつもの時間に来れなくなるならわたしに伝えたと思う。あんな約束したんだから。あーあ、あの時連絡先を聞いてたら今頃、今ごろ……
 よくよく思い返してみれば、朝の時間帯とはいえレジにはわたし以外の店員も立つこともあったわけで、それでも毎週わたしがレジ打ちしてたのは本当に偶然なんだろうか。チョコだってそう、わたしがダイゴさんへの挨拶を変えてから買わなくなったのはつまり印象づけだった可能性もわずかにある。そもそも決まった曜日時間に来るのすら覚えてもらうためなのかもしれない。
 でもまさかあのイケメンが平々凡々なわたしに時間を掛けてそんな事をするだろうか。有り得ない、流石に夢を見すぎている。あんなにイケメンなんだから、さらっと連絡先を渡せばわたしみたいな地味な女は簡単に落ちる、手間をかけ地道に印象付ける理由がない。
 気づけばわたしはダイゴさんのことを目の保養ではなく一人の男性として意識していた。そうするとぱったり来なくなったのもダイゴさんの策略のように思えてきて、まんまとはまっているのが恥ずかしかった。早くこれが勘違いだと現実を突きつけてほしいからまた買い物に来てくれないかな、分不相応な思い上がりを鼻で笑ってもらいたい。
 けれどダイゴさんは現れず、わたしは悶々とした1ヶ月を過ごすこととなった。