なぜ彼はわたしに微笑むのか

コンビニ店員夢主と常連ダイゴ

「いらっ…しゃいま、せ」
 朝の7時半、店に入ってきたのは1ヶ月ばかり姿を見せなかったダイゴさんだった。彼はこの1ヶ月来なかったことなどまるで気にした様子もなく仕立ての良いスーツを華麗に着こなしとても良い香りを漂わせて買い物をしていく。その姿を食い入るように見つめていたら、流し目でこちらを見るダイゴさんと目が合った。ダイゴさんは自分の容姿の良さをしっかりと理解しているようで、ふっと見せた微笑みはイケメンとは縁遠いわたしを舞い上がらせるには十分すぎる威力を持っていた。
 今日のダイゴさんはカツサンドにレモンティー、それからレジに置いてある小さなチョコレートバーを手に取った。またチョコ買うんだ、じっと向けられる視線を意識しないようにどうでもいい事を考える。でもこの前買う必要がないって言ってたのにまた買ってるのはどうしてだろう。あの口調から好きだから買ってるようには思えなかったのに。やっぱり印象付けっていうのはわたしの愚かな希望的観測だったんだ、だってわたしはちゃんとダイゴさんのこと覚えてるもの。1ヶ月来なくなったくらいで忘れる訳がないじゃない。そこまで記憶力は悪くないんだから。だから、
「お久しぶりですね」
 わたしがちゃんとあなたの事を覚えてるってことはせめて伝えておかなくちゃ。
「{{kanaName}}ちゃん、ボクのこと覚えててくれたんだね」
 こんなイケメン簡単には忘れません。そもそもダイゴさんの事をすぐに忘れる人なんて、探す方が難しいと思うのだけど。
 ダイゴさんはそこら辺の女の子よりもよっぽど綺麗に笑って、わたしから受け取ったビニール袋に手を突っ込むと今買ったばかりのチョコレートバーを取り出した。何だろうと見ていたらそれはわたしの胸ポケットに収まった。
「じゃあこれは{{kanaName}}ちゃんへの差し入れに。それから、」
 こっちはボクの連絡先。ぽかんとしているわたしの目の前で手帳にさらさらと何かを書きビリリとページを破る。それを二つ折りにしてわたしの手の中にぎゅっと握らせた。
「またね、{{kanaName}}ちゃん」
 店内に流れるさわやかな恋愛ソングが歌うように、わたしは高鳴る鼓動に一片の幸福を感じていた。