マッハダートどちらも好きな夢主と選ぶ以前の問題のダイゴ
「ダイゴさんはマッハとダート、どっちが好きですか」 私たちのすぐ横を風に乗って掛けて行く自転車に目を向けながら、なんとはなしに聞いてみた。それは単なる興味で話のきっかけにすぎなくて、何も深刻になる話ではなかった。時々マッハダート戦争が起こるとか起こらないとか言われているけどわたしはどちらの自転車も好きだからダイゴさんが何と答えようとも不穏な空気になんてなるはずもない。 「ダイゴさ、ん……?」 しかし一向に返ってこない言葉に隣を歩く彼へ視線を向けると、眉間にしわを寄せ困ったように考え込むダイゴさんがそこにいた。まさかダイゴさんはこの話題で戦争始めちゃうタイプの人間だったのか、慌ててわたしはどちらも好きだと平和主義であることを伝える。けれどダイゴさんの眉間のしわは消えてくれそうにない。 「えっと……あっ、あの自転車はマッハですね! 風が気持ち良くてついつい思い切り漕いじゃうんです」 どちら派であってもこれには同意するんじゃないかと言ってみたけれど、やっぱりダイゴさんは難しい顔のまま、しかもよく見れば視線も逸れている。 その時、わたしはピンときてしまった。二択に答えないのは答えられないから、視線を逸らしたのは同意したくても同意できないから、なんじゃないかと。 「さすが御曹司……」 思わず零れた言葉は小さくない声で、恥ずかしそうにしているダイゴさんにじろりと睨まれる。何でも出来ると思っていたダイゴさんがまさか自転車に乗れないなんて、まさかわたしの方が得意なことがあるとは。 「練習します?」 「しないよ」 珍しく拗ねているのが顔に出ていて、それが可愛いなあとにんまりしていたら不意打ちで唇を奪われる。真っ赤になったわたしを負けず嫌いなダイゴさんがにやりと笑った。