かくて彼は瞼を閉じて眠りについた

ダイゴ視点→夢主視点
振り回されているつもりのダイゴと上手く転がす恋人夢主

《見せたいものがあるから時間がある時に家に来て!》
 {{kanaName}}からメッセージが届いたのは3日前、何を見せたいのと尋ねても《来てからのお楽しみ》と勿体ぶるばかりで{{kanaName}}は頑なにそれが何かを語らなかった。最初のメッセージではさほど興味を持たなかったダイゴもそこまで自信があるならと溜まっていた仕事を片付け夜風を頬に受けながら{{kanaName}}の家へと赴いた。
 玄関のドアを開けるなり{{kanaName}}はダイゴの腕を取って引きずるように部屋へと案内する。脱ぎ散らかした革靴が気になりつつもやけにご機嫌な彼女のペースに飲まれダイゴはふっと息を吐く。自分に対して遠慮をしない彼女の奔放さは、疲れることも少なくないが今のようにダイゴの肩の力を適度に抜いてくれることも多い。救われている、とは言い過ぎかもしれないが心を許せる存在であるのは確かであった。
 通された部屋はリビングで、そこはお世辞にも広いとは言えず、家具やら何やらで雑多な感じのする部屋は実際よりも随分と手狭に見えた。
 それは、そんな部屋の一角に鎮座していた。
「じゃーん! 人をダメにするポケモンドール・ゴクリンバージョンでーす!」
 金運アップにと置かれていたはずのパキラは姿を消し、巨大なゴクリンドールが眠たげな目をこちらに向けている。これが見せたいもの、か。ダイゴは自分と{{kanaName}}のテンションの差に申し訳なさを感じつつ、こんなものを見るために呼ばれたのかと少しばかりうんざりとしていた。
 しかし、先日のリーグ会議でツツジが僅かに頬を赤らめて語っていた話を思い出す。あの生真面目な彼女が興奮して話すのだから触り心地は抜群に良いのだろう。少しだけ興味の湧いたダイゴは自然を振る舞って人差し指を沈める。絶妙な柔らかさが指を包み込む。
「ツツジちゃんから教えてもらったの、ゴクリンバージョンも出たんだよって」
「そうなんだ」
「カビゴンでも良かったけどパキラの代わりに置くなら同じ緑のゴクリンの方がいいでしょ」
 このゴクリンはどう楽観的に考えても観葉植物の代わりにはならないだろう、ダイゴは背後の{{kanaName}}には気づかれないようため息をついた。
「…………あっ、いっけなーい!」
 手のひらでゴクリンドールを撫でていたダイゴは突然の{{kanaName}}の大声に振り返る。ニコニコとした笑顔がダイゴを見つめていた。
「牛乳が切れてるの忘れちゃってた、今から買ってきていいよね、行ってくるね」
 ダイゴの返事を待たずに{{kanaName}}は財布を掴むと部屋を飛び出してしまう。部屋に一人きりとなったダイゴは目を瞑り大きく深呼吸すると引き寄せられるようにゴクリンドールへと倒れ込んだ。
 あぁ、これは名前に違わず人をダメにしそうじゃないか。{{kanaName}}が帰ってくるまでは許されるだろう、頼むからゆっくりしてきてくれ。

***

 普段ならわたしの興味もそっちのけで石の話を延々とするダイゴがここ暫くやけに静かだった。こういう時は疲れをたっぷりと溜め込んでいると今までの経験から分かっていたから何とかダイゴを休ませたかった。でもダイゴはあれでカッコつけだからわたしが普通に声を掛けても素直に言うことを聞いてくれない。面倒だけど何か一芝居打たなくては。
 ツツジちゃんが話していたカビゴンドールのことをすぐに思い出せたのはラッキーだった。さっそく調べるとなんとゴクリンドールもあるらしく、こちらの方がカビゴンより緩い雰囲気があったからゴクリンを選んで注文した。
 家に届くとすぐにダイゴに連絡をしたけど食いつき方がイマイチだったから勿体ぶって隠してみた。けれどこれを見たら呆れるんだろうな、疲れているならなおさら。
 連絡をして3日後、ようやくやって来たダイゴは予想通り疲れた顔をしていた。でもきっと自分では隠し通せてると思ってるはず。まったく、わたしが一体誰の恋人か分かってるのかしら、貴方の疲れくらい見抜けなきゃとっくに貴方の隣から離れてるっていうのに。
 ダイゴは初めは興味ないって顔でゴクリンドールを見ていたけれど、触った途端に頬が緩んだのを見逃さなかった。直接は見えなかったけれど窓に反射してたのをちゃんと見てたのわたし、ダイゴは疲れきっていたからそれには気づかなかったみたい、この時ばかりは疲れたダイゴに感謝した。
 だからわたしは適当に理由を作って外へと出た。さあ何をして時間を潰そうかな。