白を纏う

恋人ダイゴの家でシャワーを借りる夢主

 タマザラシと海辺で遊んでいたら盛大に転けて全身ずぶ濡れになった。心配したタマザラシが水でっぽうで海水を落としてくれたけれど唯一被害を免れていた顔までもびしょびしょになってひどい有様だ。私はスカートの裾を絞ってぐしょぐしょの靴を脱ぎ、慌てふためくタマザラシをボールへ仕舞うとダイゴの家へと向かった。
 海辺で遊んでいたのはダイゴが楽しそうに石を磨いていて相手をしてくれなかったからで、もしダイゴが私に構ってくれたらこうはなっていなかった、かもしれない。そう考えると段々ムカムカとしてきて、ぽたぽたと滴る水で彼の家が汚れるかもと心配する心を捨ててチャイムも押さずに合鍵を使った。
「随分と、はしゃいで来たんだね」
 物音に石から顔を上げたダイゴと目が合った。私の大変身に驚いているようでぱちぱちと瞬きを繰り返している。それが何だか面白かったけれど今はこのずぶ濡れで不愉快な状態を何とかするのが先だ。
「着るもの貸して」
 それだけ言ってお風呂場へと向かう。フローリングにはくっきりと足跡が残ったけれどそれも知らんぷりした。脱衣所で水分を吸って重たくなった衣服を剥ぎ取って洗濯機へ放り込む。
 頭からシャワーを浴びて残っていた汚れを洗い流し、ついでに上手く言いくるめて買わせた少しお高いボディソープを使う。殆ど減ってないそれはもしかしなくても私しか使っていないらしい。当時は言いくるめたと喜んでいたけどそこまで含めてダイゴの思惑通りなのかもしれない。
 お風呂から上がるとバスタオルと着替えが用意されていて、私が泡だらけになっていた時に聞こえた物音はダイゴだったのかと合点がいく。
 バスタオルで体を拭きながら用意された着替えに目を落とす。確かに私は端的に“着替え”としか言わなかったけれどカッターシャツを用意されるなんて思っていなくて戸惑ってしまう。Tシャツだとかスウェットだとか、もっと無難なものを用意してくれると思っていたのに。私はそろそろとシャツを広げる。
 普段着ているブラウスよりも優に一回りは大きいそれに袖を通す。袖も裾も長く、綺麗にアイロンのかかったそれはびしょ濡れになった服の代わりに着るようなものではなくて。柔軟剤の香りだろうか、どこか安心する香りが鼻をかすめ、それがダイゴに体を寄せた時と同じ香りだと気づくと少し恥ずかしくなった。
「着替え、ありがと」
 熱くなった頬を誤魔化すように手で顔を扇ぎながらダイゴを見やる。私の方に向けられたら視線が頭から爪先へと動き、折り返して私の瞳でぴたりと止まる。ダイゴの唇はゆるやかな弧を描き「似合ってる」ゆるりと動いた。
「暑いならボタン、外せばいいのに」
 言うや否やダイゴの指が首元へと伸びる。きっちりと留められていたボタンはあっという間に上から順に二つほど外されて、身の危険を感じて後ろへ下がるとダイゴの口角がさらに上がる。
「服が乾くまでこっちにおいでよ」
 差し出された手を取ればどうなるか、分かっていても私の選択肢はひとつだった。