それはひとりじめのしるし

夢主に贈り物をするダイゴ

 これはボクの我がままなんだけど。少し歯切れの悪い言い方でダイゴが話し始める。
「嫌なら嫌と言ってくれて構わないけど」
 人が変わったように自信のない様子に面食らいつつも、いつまでも用件を話さないダイゴに少し面倒を感じる。なぁに、と促すとようやく決心したのか私の目を見て口を開いた。
「ボクの代わりだと思って身に付けててほしいんだ」
 ダイゴは私の手を取ると手の平の中に何かを落とした。それはよくよく知っているものだった。
 どうしていきなりそんなことを、どぎまぎとしながらそわそわするダイゴを見上げると「{{kanaName}}に悪い虫が付いたらボクが困るから」照れ隠しのようにふいと視線を逸らされて。
「どう、かな」
 手の平の中で光るのは目の前のダイゴがいつも身に付けているリングにそっくりで、けれど恐らく私の薬指にぴったり合わせたものだった。
「……もしも嫌だって言ったら?」
 私の問いにダイゴは眉根を寄せ瞳を閉じてしばらく考え込んだ。その間に私はそのリングを嵌めてみる。果たしてそれはそこにあるのが自然というように薬指に落ち着いていた。けれどそのデザインはあまりにもダイゴそのもので誰も見ていない今ですら落ち着かない。それを他人のいる場でも嵌めていてだなんて、少しばかり難しい要求だ。
「困ったな、そんな返答されるとは思ってなかったから答えが見つからないよ」
 ダイゴは私の顔をじっと見つめる、その問いがどれほど本気であるかを確かめるようにまっすぐに。
「ちなみに理由を聞いても?」
 こちらに向けられるのは笑顔だったけれど声はどこか頼りない。私は回りくどい返事をしてしまったことを後悔する。もっと素直に恥ずかしいと言えばよかった。
 怒らないでねと前置きをして、じっとこちらを見るダイゴの視線から逃げるように顔を逸らす。そしてひとつ息を吐いて答えた、恥ずかしいと。
「せめて違うデザインなら、」
 まだ恥ずかしくないかもしれない。そこまで言ってそろそろとダイゴへ視線を向ければ何とも形容しがたい表情がそこにあった。強いて言うなら、そう、味のないパンケーキでも食べたような、そんな顔だ。
「せっかく{{kanaName}}のために用意したのに」
 ダイゴが私の左手を掴むと口元まで寄せて鈍く光る指輪へと唇を落とす。そうしてもう一度、今度はいつもの余裕のある笑みを浮かべて口を開く。
「ボクの代わりだと思って身に付けててほしいんだ」
 ここにボクを感じてよ。熱を帯びたその声に、私は抗う術など持ち合わせていなかった。