プレゼントは唐突に

友人のダイゴから突然誘われる夢主

「この時期は誰も彼も浮かれてるよね」
 そう言ってわたしのお弁当からミニトマトを摘むのはツワブキダイゴ、ここデボンコーポレーションの社長のご子息サマ。時々こうやってわたしのお昼に顔を出しては世間話をしながらおかずを取っていく。今日もそう、一人遅れてお昼を食べていたらふらりと現れ隣の椅子に足を組んで座っている。
「今日までに何度明日の予定を聞かれたか分からないよ」
 空いててもその子たちを誘うことはないのにね。はぁと吐き出されたため息はどんよりとしていた。心底うんざりしているのが嫌でも伝わってくる。下心を込めてダイゴに言い寄る女性の姿は容易に想像が出来て、同時に貼り付けた笑顔でそれをかわしているダイゴもありありと目に浮かぶ。
 常日頃恋愛事には興味がないと言っているのだから、クリスマスだってダイゴにとっては何ら特別でもない一日だというのに、どうして彼を狙う人達は懲りもせずアプローチをするのだろう。そんな事を繰り返していたらいつの日か本当に嫌われてしまうかもしれないのに。
「親父もだ、普段は何も言ってこないのに明日は予定があるのか、なんて聞いてきてさ」
 再び伸びてきた手が少し迷ってから卵焼きを選ぶ。ペロリと指を舐めながら「{{kanaName}}の卵焼き、ボクは好きだよ」なんて嬉しい言葉を添えるから思わず頬が緩んでしまう。けれど次の瞬間にはにやけ顔を引っ込めて勝手に食べないでと怒ってみせる。
 少しでもダイゴに特別な好意を見せて今の友人としての立場を失くしてしまうのは嫌だった。だから胸に秘めた恋愛の情は決して気付かれてはいけない。
「だから、って訳じゃないんだけど」
 隣のダイゴがわたしの瞳をじっと見つめてくる。その視線に気づいて顔を向けると滅多に見ることのない、ダイゴのぎこちない笑みが視界に広がった。
「明日ボクと食……、デートしようよ」
 不器用な笑顔は緊張しているせい、わたしの手から途端に力が抜けてお箸が落ちたのは混乱のせい。慌てて拾おうと屈めば先に拾おうとしたダイゴの手に指が当たった。反射的に手を引っ込めたわたしにダイゴは「{{kanaName}}はドジなんだから」とぎゅっと手を包み込むようにお箸を渡してきて。
「他に予定があっても{{kanaName}}ならボクを優先してくれるよね」
 いつもの強気な笑みがわたしの瞳を射抜くから、未だ信じられない言葉に頭を真っ白にさせながらも請われるままに首を縦に振っていた。ダイゴは満足気に笑うと「午後も頑張ってね」と、くしゃりと頭を撫でて颯爽と立ち去った。けれど髪に隠れた耳が赤くなっているのがうっすらと見えて、わたしは同じように染まる耳に触れていつまでも消えた背中を見つめていた。


 しばらくして昼休憩から戻らないわたしを探しにやって来た先輩が見たのは、食べかけのお弁当を放り出したまま、真っ赤な顔をテーブルに突っ伏したかわいそうな後輩の姿だった。