ダイゴと川辺で砂金探しをする夢主
キラキラと日光を反射する水面に桜の花びらが流れていた。一枚、二枚、踊るように下流へと向かってゆく。川の流れてくる方を見やる。緩やかに蛇行した川の先は岩に隠れ、桜の木は見えない。この川を遡れば見えるのだろうか。昔見た満開の桜を思い浮かべ、それがこの山にも広がっていると思うと、見てみたいとなるのはごく自然のことだった。 バシャバシャと豪快に水を蹴り上げながら川べりへと戻る。傍にいてくれたユレイドルがゆったりとした動きでその後ろをついてくる。伸ばした触手の一本が服の裾を器用に掴んでいるのは、川へ入った時に足を滑らせ、危うく転び掛けたわたしを気遣っての事だろう。 川べりに戻ると、不思議な道具で川の中の砂を調べては捨てるを繰り返すダイゴに手を振った。 「楽しい?」 「楽しいよ」 川で砂金が採れると知ったわたしが何の気なしに「すごいね」と言ったのがつい先日のこと。ダイゴは何をどう理解したのか、砂金取りに良い場所があると笑顔でわたしをここへ引っ張ってきた。 {{kanaName}}と行きたい場所があるんだ、と満面の笑みを浮かべていたのが少し妙な感じがしたけど、石探しが楽しみで仕方なかったようで。てっきり久しぶりに二人で過ごせるから喜んでるのかと思ったわたしは少し肩透かしを食らった気分だった。ダイゴがどういう人か知っているはずなのに、わたしもまだまだ甘い。 「見つかったらもちろん嬉しいけど、こういうのは探すこと自体を楽しむものなんだ」 ダイゴは腰を屈め、川の中の砂をスコップで掬うとすり鉢状の容器の中へ入れる。余分な砂を容器を回した遠心力で落とすと、残った砂粒をじっと見つめては再びスコップで砂を掬う。地味な作業だった。探すことを楽しむとダイゴは言ったけれど、あてもなく砂を掬うのは正直つまらない。なのにダイゴは何が楽しいのか少しも飽きた様子を見せない。さらに、わたしが放り投げた道具を使って主人を真似て遊ぶユレイドルも終始満面の笑みを浮かべている。そんな一人と一匹が可愛くて、彼らが満足するまで付き合ってあげることにする。 とは言っても光る粒は一向に姿を見せず、ダイゴはわたしの事などすっかり忘れて黙々と作業を続けている。はあ、ついため息が漏れた。 その時、ダイゴが小さな声を上げた。水中からパンニング皿を持ち上げ、来てよとわたしを呼ぶ。 少年がそのまま大人になったような笑顔だった。こんなにもあどけなく笑う人が、ひとたびボールを構えたらホウエン最強になるなんて、そのギャップが恐ろしい。隣でスコップを振り回すユレイドルだってそう、彼女が幾度も挑戦者のポケモンを薙ぎ倒しているのをわたしは知っている。 皿を覗き込んでみるとダイゴが喜びの悲鳴を上げた理由がすぐに分かった。きらり、小さいけれど確かに輝く砂金が二つ、そこにあった。一緒に覗いたユレイドルだけは不思議そうな顔をしていたから、このキラキラはすごいんだよと説明したらにっこりと笑って、触手を伸ばしダイゴの頭を撫でた。ついでにわたしの頭も撫でたから、わたしもユレイドルの頭を撫でてあげた。 「ほら、これで採るんだよ」 手渡されたスポイトで砂金を吸い、ダイゴの持つ小瓶へ落とす。水と一緒に閉じ込められた砂金が太陽を反射して眩しかった。 「探せば他にも見つかると思うけど、その顔だとこれで充分みたいだね」 苦笑いして、ダイゴが中腰の体勢を解く。腰に手を当て背中を反らす様子はダイゴには似合わなかったけれど、こんな時じゃなければ見れなかったと思えば途端に可愛らしく見えた。そういえばダイゴが可愛く見えるのは石と関わっている時が多い。少しだけ石に焼きもちを妬いてしまう。 「もう少し上へ登ると桜が綺麗なんだ」 きっと{{kanaName}}も気に入るよ、思い出したように言うダイゴに二つ返事をする。そしてダイゴについて川から上がると、手渡されたタオルで濡れた手足を拭く。 ちらりと横目でダイゴを見やる。ダイゴはボトムスを膝まで上げていて、逞しいふくらはぎやしっかりとした足首が露わになっている。決して初めて見るものでもないのに、どうしてだろう、どきりと心臓が跳ねた。 乾いた石の上に腰を下ろし、真っ白なタオルで丁寧に水分を拭う。それだけの事なのに、まるで見てはいけないものを見てしまったような錯覚があって、慌てて視線を逸らした。 忘れていた。普段の彼は、些細な所作でさえわたしの視線を奪っては鼓動を早め、体温を上昇させるのだ。可愛い瞬間はあっという間に去っていた。 「じゃあ行こうか」 ダイゴがユレイドルをボールへ戻し、トレッキングシューズの靴紐をしっかりと結んで笑う。今日のダイゴはいつもより楽しそうで、そんなダイゴが見れるならたまには一緒に石探しも良いかもしれない、と微笑み返す。 ポケットの中で、小瓶の中の金の粒が頷くように揺れていた。