ダイゴ視点/コンテストに向けて頑張る夢主を応援する
「出ておいで!」 モンスターボールから放たれたロゼリアは両手に色鮮やかな花を咲かせていた。毎日愛情たっぷりに育てられた証だ。 「今日も元気だね」 頭のトゲには猛毒があるから触れないように気を付けて傍に寄ると、ロゼリアが両手の花をダイゴへと向ける。赤と青の花はどちらも美しく、強い香りを放っている。リラックス効果のあるそれは、ミントを口に含んだ時のような爽快感をダイゴへと与える。どこかピリッとした空気を感じるのはこのロゼリアの隠しきれない戦闘本能からくるものだろうか。 「風の向きと、強さと、それから……」 ロゼリアのトレーナーの{{kanaName}}は、ロゼリアもダイゴの事もそっちのけでぶつぶつと呟いている。君のご主人は何をしているのかな、とロゼリアへ訊ねてみてもまっすぐに見つめ返されるだけだった。 「よし、やるよロゼリア!」 風がさわさわと辺りの桜を揺らし、花びらが舞っていた。呼ばれたロゼリアは{{kanaName}}の指示にしたがってダイゴから離れる。けれどその瞳はずっとダイゴを捉えていた。瞳の中では戦う意志が燃えていて、反射的に腰のボールへ手が伸びる。しかし{{kanaName}}からはポケモンを出すようには言われていない。ダイゴは手を下ろした。 {{kanaName}}が視線を下げ、一呼吸、そうして顔を上げてダイゴを指さしながら技を口にする。 ――はなふぶき。 ロゼリアが赤の花の咲く手を天へ突き出す。すると、今までそよいでいた風が沈黙し、刹那、ロゼリアを中心に新たな風が生まれる。風が桜の花弁を掬い上げ、視界が桜色に染まってゆく。時々視界を横切る薄紅はロゼリアの生み出した花弁だろう。 「どう?」 ダイゴが視線に気が付いたのはロゼリアと自分を包む風が止み、再び視界に{{kanaName}}の姿が見えてからだった。自信と不安が綯い交ぜになった瞳が向けられている。 「とても綺麗だったよ」 「次のコンテストでお披露目しても大丈夫かな」 バトルの事ならホウエンでダイゴの右に出る者は存在しない。だからたとえそれが普段扱わないポケモンの事であっても自信を持って答えることが出来た。しかし今訊ねられたコンテストに関しては門外漢である。それでも、 「大丈夫、審査員も観客もみんな魅了できるよ」 ダイゴが自信を持ってそう言ったのは、彼女の求めるものが率直な意見ではなく励ましの言葉だったからだ。ロゼリアの瞳に光る鋭さが和らいだ。 「とても綺麗だったよ。きっと、」 きっとミクリも感心するよ。そう言おうとして言葉を止める。{{kanaName}}が言葉を求めたのは自分じゃないか。わざわざミクリの名前を出す必要もない。じわりと滲む嫉妬を振り払って、続きを待つ{{kanaName}}へ言葉を紡ぐ。 「きっと、優勝できる」 どこか寂しく見えていた桜並木が満開に変わる。足りなかったのは愛おしい彼女の笑顔。さっきの花吹雪なんてこの笑顔の足元にも及ばないと思うのは{{kanaName}}がダイゴの恋人だからだろうか。 ロゼリアがダイゴと{{kanaName}}を交互に見やって、見えないドレスの裾をつまんで恭しくお辞儀をする。主人を勇気づけたお礼のつもりだろうか。その仕草にルネを思い出す。このロゼリアは挑発を覚えていないはずなのに、随分な仕草だ。このロゼリアはどれだけ経ってもダイゴのことを認めようとしない。 「次のコンテストは一番良い席で{{kanaName}}の晴れ姿を見ようかな ロゼリアを追い抜き{{kanaName}}を抱きしめる。驚き照れる彼女の耳元で囁くと「はずかしい」なんて照れた声が返ってきてますます愛おしさが増してゆく。 足元のロゼリアが不満げに睨んでいる。微笑みを向け、{{kanaName}}からボールを奪って小さなお目付け役を最も安全で最も遠い場所へと仕舞い込む。そして{{kanaName}}の髪に付いた花弁を取ると静かに流れる風へ解き放った。