花畑で一緒に花冠を作るダイゴと夢主
とっておきの場所なんだとダイゴさんに誘われた場所は、一面に色鮮やかな花が咲き誇る花畑だった。 「きっとここに棲むポケモン達のお陰なんだろうね、いつ来ても花が咲き乱れているんだよ」 そう言って、ダイゴさんが腰のボールを放り投げる。ダイゴさんの一番のパートナーのメタグロスに今日もフライパンをかじって叱られてたココドラ、それからとっしんを愛情表現に使うダンバルが勢い良くボールから飛び出した。小さな二匹はボールから解放されてあっという間に花畑の中へと消えていって、メタグロスも赤い目をちかちかさせダイゴさんとわたしを交互に見やったかと思うとゆっくりと二匹の後を追った。 みんな行っちゃった、ちらりとダイゴさんを窺えば、花畑の中に腰を下ろして三匹の後ろ姿を目で追っている。けれどわたしの視線に気がつくと「どうしたんだい」とちょっと首を傾げて微笑んだ。花が咲いたような笑顔に、どきりと胸が鳴る。 「ここは穏やかなポケモンばかりだから{{kanaName}}も出してあげるといいよ」 ダイゴさんの視線が腰のボールへ向けられる。提案と言うには強いまなざしに、わたしは促されるままボールを投げると遊んでおいでと走り出すポチエナを見送った。ここまで運んでくれて、今は傍で羽を休めていたエアームドも、よく磨かれた鋼の翼を広げて飛び立ってゆく。 いよいよわたし達のポケモンは皆この場を離れてしまった。声を掛ければすぐ戻ってくる場所にいるとはいえ、今この場にはわたしとダイゴさんの呼吸しか聞こえない。二人きり、そんな言葉が浮かんで、また心臓がどきりと鳴る。 「ボクはここにいるけど、{{kanaName}}も自由にしていいから」 その声に振り返る。ダイゴさんと目が合った。やんちゃなポチエナが怪我しないか心配ではあったけど、ここに腰を下ろすことに決めた。ポケモンと遊ぶより、今はダイゴさんの隣がよかった。 そんなわたしにダイゴさんは肩を竦めて小さく笑って、いつの間にか摘み取っていた花を器用に編み始めて。思ってもみなかった行動にぽかんと間抜けな顔で見つめていたら「そんなに驚く事かい?」唇が綺麗な弓形を作っていた。 「ボクだってこういう遊びも知ってるさ」 喋りながらも手は動かしていて、だんだんとそれが形を現してくる。花冠だった。鮮やかな花畑が美しい冠を形作ってゆく。 「見てるだけじゃつまらないだろう、{{kanaName}}も作ったらどうかな」 渡された花を手に小さく頷くものの、残念ながらわたしは作り方を知らない。だからこそ手際良く編んでゆくダイゴさんに驚いてしまったわけで。どうしよう、素直に分からないとも言えなくてもじもじしていたら「こうするんだよ」ダイゴさんが新しく二本の花を手に持つと編み方を見せてくれた。 わたしより大きくて長い指が優しく茎を掴んで丁寧に編んでいく。見よう見まねで編んでみるけれど、ぎこちないわたしの手ではダイゴさん程綺麗に編むことが出来ない。見ていると簡単そうなのに、いざやってみると意外と難しい。悪戦苦闘して顔をしかめていると、見かねたダイゴさんが「そこはね」とわたしの手に触れた。どきりと心臓が鳴る。にわかに上がる体温とわあわあと煩くなる心の声を悟られないよう、顔だけは崩すまいと必死で澄まし顔を保ち続けた。 そうして何とか出来上がった花冠は少しいびつで不格好ではあったけど、初めてにしてはそこそこの出来だった。満足して頬を緩ませていると突然、「ダバン?」すぐ耳元でよく知った鳴き声が聞こえた。 わっ、と振り向くとダンバルが珍しそうに花冠を見つめ、赤い瞳をちかちか光らせている。名前を呼んでも返事がないくらい花冠だけを捉えていた。もう一度、今度はさっきより大きな声でダンバルを呼んで、「これが欲しいの?」と訊ねてみると、真っ赤な瞳が花冠とわたしを交互に見て、それから一度だけダイゴさんを映して「ダババン」二度ほど頷いた。じゃあ、と頭へ載せてあげるとダンバルは嬉しそうに体を揺らし、また遊びに戻っていった。 「ふふ、ボクのはどうしようかな」 ダイゴさんの言葉にはっとして「勝手な事してすみません」慌てて謝る。わたしの不格好な花冠よりも主人の作った完璧な花冠の方が良いに決まってるのに、何も考えずに乗せてしまった。戻って来たら交換してあげな―― 「じゃあこれは{{kanaName}}に」 ふわりと頭に乗せられたのは勿論ダイゴさんの花冠。暇つぶしに作っていたであろうそれは、何故かわたしの頭にぴったりのサイズで頭に乗せられていて。 「うん、よく似合ってる」 目が合って、にこりと微笑まれる。それが恥ずかしくて顔を逸らしたら腕を取られて「{{kanaName}}」いつもより少し柔らかい声が名前を呼ぶ。照れながらも視線を戻すとアイスブルーの瞳がわたしだけを映していた。 「ふふ、何だかお姫様みたいだね」 不意に向けられた可愛らしい言葉に、跳ね上がる鼓動も熱くなる肌も隠す暇なんて与えられなくて。手を振り解いて立ち上がると、誤魔化すように「ポケモンたちを見てきます」とダイゴさんから逃げ出した。 心を落ち着かせてポケモン達と一緒にダイゴさんの元へ戻ったら、今度は花で作った小さな輪っかを指に嵌められるのだけど、この時のわたしはダイゴさんがそんな物を作ろうとしてるなんて露も知らず、ひたすら上昇する熱を冷ますだけで精一杯だった。