恋人の日ネタ(だったけど間に合いませんでした)。 ダイゴ視点 ※ダイゴの手持ち捏造してます(アバゴーラ)。
「だったら海底洞窟に行きませんか」 心地良い風の吹く晴天、どこか行こうかと{{kanaName}}を誘ったら思いがけない返事が返ってきた。 {{kanaName}}はボクの趣味に理解はあってもこんな風に自分から山や洞窟に行きたいと言うことは今までなかった。誘えば着いて来るし鮮やかな色の鉱石が見つかるとボク以上に喜んでくれる。この前は自分で原石を買ってヤスリで丁寧に磨いてもいた。そのうちの一つ、ラピスラズリはボクの家に飾ってある。けれど、{{kanaName}}が石を取りに行こうと誘って来る事は今まで一度もなかった。 だから、思わず聞き返していた。 「せっかく晴れているのに、海底洞窟でいいのかい」 もちろん海が荒れていたら海底洞窟に行くのは危険だ。行くなら今日のような波の穏やかな日がいい。でもあそこは日光が差し込む場所があるでもない。だったら天気が良い時にしか行けない場所で石を取る方が楽しいと思うんだ。例えば―― と、そこまで考え思考をストップする。てっきりボクは洞窟に行く理由を石探しだと思い込んでいたけれど{{kanaName}}はまだ何も言っていない。ボクが知らないだけで海底洞窟に行く理由が他にあるのかもしれない。 改めて{{kanaName}}を見る。ぶんぶんと何度も大きく頷き、「今日は海底洞窟に行きたいです」とボクをじっと見つめてくる。あんまりにも真剣な顔をするから何だか睨まれてるようにすら見えた。 何か理由があるのは明らかだ。その何かはボクには分からなかったけれど、今ここで聞くのも野暮というもので。どこかソワソワする彼女に微笑みかけると「さっそく行こうか」{{kanaName}}の手を取った。 * 海底洞窟へ行くため128番水道から海の中へと潜った。波は穏やかで、海中も晴天のお陰か見通しも悪くない。 それなのに、アバゴーラの甲羅に掴まったまま後ろを振り返ると{{kanaName}}の姿が見えなくなっていた。 アバゴーラを止めて彼女のサクラビスを探す。するとリボンのように滑らかにゆらぐサクラビスが、背の高い水草の中に見つかった。どうしてそんな所にいるんだろう、不思議に思いつつ{{kanaName}}の興味を引く存在がボクも気になった。 {{kanaName}}のすぐ側まで近寄ると、彼女が見つめる先をボクも見た。でも見えるのはチョンチーばかりで特別なものは見当たらない。もうどこかへ行ってしまったんだろうか。 と、{{kanaName}}がボクに気づいてびくりと体を震わせた。その拍子に両手がサクラビスから離れたから咄嗟に手を伸ばして引き寄せる。{{kanaName}}の頬がサクラビスの体に負けないくらい鮮やかなピンクに染まった。その初心な反応と緊張がボクにも伝わって、鼓動が少し速くなる。 {{kanaName}}がサクラビスの胴に腕を回したのを確認して、ボクらは再び海底洞窟を目指した。彼女が何を見つけてよそ見していたのかは洞窟に着いてから聞いてみよう。今はレギュレーターが邪魔で何も話せやしないし、話すにはまだ少し心臓が五月蝿いから。 今度は{{kanaName}}を見失わないよう彼女の隣を泳ぐ。{{kanaName}}は終始あちこちを見回していたけれど、海底洞窟にたどり着くと大きな気泡をひとつ吐き出した。ため息のように見えたのはきっと勘違いじゃないだろう。 * あれほど強く海底洞窟に行きたいといった{{kanaName}}だったけれど、洞窟に着いてからの彼女の行動は不可解なものだった。 どこかを目指している訳でもなく、何かを探している様にも見えない。絡め合った指は離れる素振りは見せないけれど、心はどこかへ行ってしまったように遠い目をしている。ダイビング中の時の方がよっぽど楽しそうにしていた。 「そういえば、さっき何を見つけたんだい?」 しょんぼりと目を伏せた{{kanaName}}に訊ねる。シャボン玉が弾けるようにはっとして、{{kanaName}}の気まずそうな顔がボクを見つめ返した。 「なっ何も…、まだ……」 {{kanaName}}の瞳は見ていて飽きない。それは真珠の遊色効果より鮮やかで、見る度にボクに初めての色を見せてくれる。今もそうだ。困った表情の中に焦りが見え、それから余計な事まで言ってしまったと後悔もしているらしい。必死に何か言い訳か弁解を考え瞳を忙しなく動かして何度も瞬きしている。そんな{{kanaName}}に、もう一度訊ねる。 「何を見たかったんだい」 見つめる以外は認めないと目を合わせる。それでも逃げようとするから「{{kanaName}}、ボクも一緒に探すから」繋いだ手をぎゅっと握った。 「…………ラブカス」 小さな小さな声だった。それでもボクにはちゃんと聞こえていたし、自分の声がボクに伝わったと気づいた{{kanaName}}は顔を真っ赤にしてしまった。 どうしてラブカスを、なんて聞き返すほどボクも物知らずじゃない。{{kanaName}}がポケナビで見ていたあれを、ボクだって見ていた。 ラブカスはその形から愛のシンボルとなっていて、ラブカスを見つけたカップルは永遠の愛が続くなんていうジンクスもある。ハネムーンにオススメのホテルではプールにラブカスを放していて、最近はラブカスを使ったポケモンショーも増えているらしい。 「ダイゴさんと、一緒に見たくて……」 それなら他にもっと良い場所があっただろうに、それなのに{{kanaName}}が行先に選んだのは海底洞窟だった。ラブカスを見たいと言えばボクが嫌がるとでも思ったんだろうか。 いや、ボクが{{kanaName}}の事をよく知っているように彼女だってボクの事は分かっている。{{kanaName}}が黙っていたのは理由を話すのが恥ずかしかったんだろう。 何せボクが変に騒がれたら大変だろうからとお揃いの指輪もいらないと言うんだ、そんな{{kanaName}}が可愛らしいおまじないを信じてラブカスを見たいだなんて正直には言えるはずがない。そういう所がいじらしくて可愛いんだけれど。 「いいよ、探そう。ボクはポケモン探しも好きだからさ」 頬を赤くした{{kanaName}}が大きく瞳を見開いて顔を伏せた。けれどボクの方に一歩近寄ると、甘えたエネコがするように頭を腕に擦り寄せた。 彼女はエネコではないけれど、エネコ愛好家がエネコこそ至高のポケモンだと口を揃えて言うのが分かった気がした。{{kanaName}}はよくボクに格好を付けすぎだとか心臓に悪いと言うけれど、きみの方こそボクの理性を追い詰めてくる。 「ラブカスを見つけた後で構わないんだけど、ボクも探したいものがあるんだ」 ボクの声に{{kanaName}}が顔を上げる。ボクはその唇にキスしたいのをぐっと堪えて言葉を続ける。 「{{kanaName}}に似合う指輪。ラブカスを見つけたら必要になるだろう?」 熱くなった体がボクから離れようとするのを捕まえる。{{kanaName}}がこの期に及んで迷惑がやら何やら抵抗するけれど無視をしてじっとその瞳を見つめた。くるくると表情を変えるそれはやがて諦めたように、覚悟を決めたようにボクを見つめ返す。 ボクは静かに顔を{{kanaName}}へ寄せると、きゅっと目を瞑った彼女に愛を誓うように口付けをした。