怪我をした夢主の手当をするダイゴ
エアームドの羽は一枚一枚が文字通り鋼で出来ている。それは羽ばたくために薄く、武器として使うために刃のように鋭い。そのためエアームドの羽で作る刃物は切れ味ばつぐんと有名で、三ツ星レストランのシェフもエアームド製の包丁を愛用しているのだとか。 そんな訳で、エアームドの羽を触る時は充分に注意が必要だ。不用意に掴んだりすると簡単に怪我を負ってしまう。ダイゴさんからもそれは何度も注意されていて、わたしは気を付けながらエアームドの手入れを手伝っていた。 「痛ったぁ……」 それでも人間は慣れると気が緩むもので。エアームドがぶるりと身震いした拍子に抜けた羽が顔の方に飛んできて、思わず手で払ってしまった。 ほぼ毎日入念に錆や汚れを取っているエアームドの羽は鋭く、保護用の革手袋をしていたにも関わらず指が痛い。見ると革手袋が裂けている。慌てて手袋を外すと人差し指の腹がぱっくりと裂けていた。裂け目からぷつりと赤い血が盛り上がり、傷を認識した途端にズキズキと痛みを感じ始める。 「どうしたんだい」 そんなに大きな声を出したつもりはなかったけれど、ダイゴさんは目敏く気付いてこちらにやって来た。その後ろでは彼の手入れにご機嫌だったユレイドルが少しムッとした顔でわたしに鋭い視線を向けている。ユレイドルはダイゴさん以外のマッサージはお気に召さないらしく、あの子だけは手入れを手伝った事がない。 「あっ、いや、何でも」 怪我をしたのを知られたくなくて咄嗟に手を背中へ回す。心配させたくないし、間抜けな自分を見せたくなかった。 けれどダイゴさんは素早くわたしの腕を掴んでしまい、指の辺りに切れ目の入った革手袋に気付いてしまった。よく晴れた空のように澄んだ青の瞳が大きく見開かれ、刹那わたしの怪我した方の手も掴まれた。ダイゴさんが眉間に皺を寄せて少し怒った顔になる。 「だから注意して、って言ったのに」 「ご、ごめんなさ……」 刺すような視線はまるで冷たい氷のように痛い。気まずくて視線を逸らすとはあ、と呆れた様なため息が聞こえた。確かに気が緩んでいたけれど、そんな態度を取られる程ばかな事をしたとは思わ―― 「いっ……」 掴まれた手首がぐいと引っ張られ、指が何か生暖かいものを感じ、けれど次の瞬間、傷口がビリビリと傷んだ。ダイゴさんの舌が傷口を舐め……傷口を開かんばかりに舌先を傷口へ押し付けた。そしてじゅうっと血の滲む傷口を吸い上げるとやっと指を解放した。 「消毒、してきなよ」 ダイゴさんはくるりと踵を返してユレイドルの手入れに戻ってしまう。 わたしは熱くなった人差し指をぎゅうっと反対の手で握りしめると、心配するエアームドに体を預けるように寄りかかった。消毒も絆創膏も、すぐには出来そうになかった。