ごほうびはわたしのもの

ギーマがいつも機嫌の良い理由を夜のベッドで尋ねる

 ペットボトルに口を付けてごくごくと水を飲む。熱くなった全身へ冷たい水が行き渡り、ぷはっと一度口を離す。ぼうっとした頭がクリアになっていく感覚はどこか気持ちが良く、これも一種の快感だと思ったら濡れた唇が弧を描いていた。
 もう一口、もう一回、と快感を飲み込んで半分になったペットボトルを隣のギーマさんへ渡す。ちょうど情事の後処理を済ませた彼はペットボトルを受け取ると、私と同じように喉を上下させて水を飲んだ。
 そのすっきりした横顔を眺めながら、ふとある事に気が付く。

「ギーマさんって、夜は絶対機嫌が良いね」
「…………と言うと?」

 今日はもちろん、その前も、さらにその前も、思い出せる限りのギーマさんは常にご機嫌だった。機嫌が悪い瞬間、それこそほんの少しの不機嫌ですらベッドの上では見た事がない。絶対機嫌が良いだなんて変な言葉を使ったけれど、文字通りギーマさんはどんな日でも絶対に機嫌が良かった。

「今日なんて挑戦者に対策されすぎてこてんぱんに負けちゃった、って言ってたでしょ」
「くくっ、確かに今日の挑戦者は勝負と言うよりパズルを解くようにわたしから勝利をもぎ取っていったよ」
「悔しくないの?」
「わたしは次の勝負を求めるだけさ」

 さっきその話をした時はもっと悔しそうで、次またリーグに挑戦にやって来る時が楽しみだとギラギラの悪い笑みまで浮かべていた。あの強い感情はそう簡単に消えもしなければ抑えるのも易しくない。
 けれど私の隣で水を飲む彼は瞳に澄んだ青を湛えて穏やかに瞳を細めている。
 ギーマさんはベッドに上がるとそれまでの一切を引き摺ることなく私を愛してくれる。不機嫌や苛立ちをぶつけられた事はない。私はちょっと嫌な事があったらギーマさんに甘えたくなったりツンツンしたり、そもそもそんな気分じゃないって断る事もあるのに。

「それとも、{{kanaName}}はわたしが悔しがっている方がいいのかな」
「そういう訳じゃないけど、でもギーマさんってそういう事で乱暴になったりしないから、ちょっと気になって」

 私がじっと青い目を見つめると、その目が私を真っ直ぐに見つめ返す。

「フッ、ベッドの上で{{kanaName}}をどれだけ満足させられるか自分自身と勝負している最中に、終わった勝負なんて気にしてられないぜ。そんな事できみの可愛い表情や甘い声を逃しでもしたら、そっちの方が悔しいものさ」

 コトン、ペットボトルがサイドボードに戻されたと思ったら目の前にギーマさんの不敵な笑みが迫っていて。気付けば熱い眼差しに絆され唇が重なっていた。
 水に濡れた唇はひんやりして、けれどすぐに二人の熱が交じりあって熱を取り戻す。湿ったリップ音を何度か繰り返し、ゆっくりと唇が離れていく。

「ところで、」

 肩を押されベッドに倒される。ギーマさんが覆い被さって私をじっと見下ろす。何だか楽しそうに口角を上げている。ちらりと彼の下半身へ視線を向けるとすっかり元気を取り戻している。

「今の話を要約すると、{{kanaName}}はわたしに激しくされたいと言っているように聞こえたのだが、わたしの考察は当たっているかな」
「……当たってる、って言ったら?」
「もちろん、勝利のご褒美を頂くつもりだぜ」

 ぎゅうっと強く抱き締められて唇を奪われて、二人の夜はまだまだ明けそうになかった。