『親友』の夢主の寝姿に小さな下心が出るチリ ※チリ視点 (『#ベッドルームのワードパレット』6.am2:00)
寝苦しさを覚えて目を覚ました。ぼんやりする意識で天井を眺め、それから体はそのままに視線を左右に動かす。ここは寝室で、きちんと布団を被ってベッドに横になっている。服はそのままで記憶も曖昧だったけれど、リビングで寝落ちするのだけは回避したようだ。チリはホッとして目を閉じる。 が、意識が落ちる前に再びまぶたを開ける。{{kanaName}}はどこや、一緒に寝てんのやろか。その姿を確認しようとチリは慌てて首を動かす。果たして、すぐ隣ですやすや眠る親友の姿をぼんやりと捉えた。 数日前のことだ。{{kanaName}}が珍しく深刻な顔をしてチリにお願いがあるとやって来た。何だ何だと真剣に話を聞けば、何やら彼女はお酒のことで悩んでいるらしい。 周りからそれなりに飲めると思われている{{kanaName}}は度々強めのお酒を勧められることがある。今はまだ醜態を晒すことなくやり過ごせているが、いつか大失態をしでかすのではないか。その前に一度自分の限界を知りたい。それで介抱要員をチリに頼みたい。要約すればそんな事を{{kanaName}}は頼んできた。 どうして自分に。そうチリが訊ねると{{kanaName}}は「だって、」と潤んだ瞳でチリを見上げた。 「こんなの、チリにしか頼めないよ」 信頼を寄せる眼差しがチリに絡みつく。チリの事を『親友』だと信じて疑わない{{kanaName}}に、チリの良心がぐらぐらと揺れる。{{kanaName}}は目の前の『親友』がまさか『狼』だとは考えた事もないだろう。だからこんなにも無防備に隙を見せる。親友の役得と言うべきか、或いは損をしていると言うべきか。チリはふっと息を吐いて眉を下げた。 「ええよ。ほな自分が飲みたいもん全部用意して潰れるまで飲もか」 「ありがとうチリ、大好き」 花が綻ぶように{{kanaName}}も笑顔になる。何の不安も感じていない、安心しきった笑顔だった。それに比べて果たして自分はきちんと笑えているのだろうか。チリには目の前のきらり輝く瞳に写った善人面が、どうしても腹を空かせて涎を垂らす獣にしか見えなかった。 それにしても、だ。自分まで酔い潰れるのは想定外だった。飲酒後特有の気だるさに再びまぶたを閉じながらチリはため息を吐いた。{{kanaName}}が一口飲んでは別の酒を味見するものだから、テーブルに溢れる飲みさしを処理するのは必然的にチリの役目になっていた。 今さら関節キスだと大はしゃぎする歳でもないが、口紅の跡がうっすら残る缶やグラスに何も覚えないほど淡白でもない。これは思わぬ役得だ、チリは密かににんまりしてグラスに残るその跡に自分の唇を重ねて酒を呷った。 けれどそれがいけなかったらしい。普段以上に気分の上がったチリはどうにか{{kanaName}}を寝室まで運ぶことはできたが、それ以上の世話をする前に自分も寝落ちしてしまった。 チリが{{kanaName}}を家へ招いて深更に及ぶことは今までも幾度かあり、{{kanaName}}が泊まっていくことは何度もあった。チリが用意した部屋着を着て、二人で寝るにはやや狭いセミダブルのベッドで一緒に横になるのだ。それは今日も変わらない。 けれど今の{{kanaName}}は服も着替えず風呂にも入らず、いつもと違ってベッドの大部分を占拠している。いつもと違う状況、そして抜け切っていないアルコールがチリの判断を狂わせた。 (バレへんかったら大丈夫) 一言で言うなら魔が差したのだ。チリは手を伸ばす。やっと暗闇に慣れた瞳が見つめる彼女へ、そっと慎重に。 チリの手が{{kanaName}}に触れる。チリが撫でたのは{{kanaName}}の腹だった。腕は普段でも何かと触れる口実がある。胸は流石にやりすぎだ。ならば、万が一今目を覚まされても『親友』なら許されるぎりぎりの部位は、と考え導き出されたのが腹だった。 チリは手のひらに全神経を集中させた。柔らかな感触が服の上からでも伝わってくる。けれど理性が半分溶けた頭が更なる欲を覚える。まだ大丈夫だろう、とシャツを掴むと静かに捲り上げた。暗闇で分かりづらかったが、肌が露わになったのは確かに感じた。 (後できれいに直したら問題なしやから) チリは己の手を{{kanaName}}の腹へと滑らせる。今度はヘソの形までくっきりと感じられた。指でその周りをくるりとなぞり、その穴をそっと突く。指先を飲み込んだヘソからゆっくりと指を離し、今度は別の指先を穴へと挿す。 何度かそれを繰り返した後、チリはめくれ上がったシャツを綺麗に元に戻し{{kanaName}}に背中を向けた。寝ぼけていた理性がようやく自制に成功したようだった。ほんま何してんのやろ、チリはそのまま強く目を閉じ邪念を追い払う。背後で{{kanaName}}がもぞもぞと体を動かしたのはその時だった。 「ん……っ」 「なっ、」 寝返りを打った拍子に伸びた腕がチリの肩に当たる。そのまま肩を掴まれ{{kanaName}}が体を寄せた。チリの背中に{{kanaName}}の温もりが広がってゆく。チリが悩みに悩んで突拍子もない結論を出したのとは対照的に、{{kanaName}}の無意識は反射のごとくチリを抱きしめていた。チリの吐く息が先程より少し熱くなり、萎ませた下心が勢いを取り戻す。 時刻は午前二時、夜明けまではまだ遠い。{{kanaName}}が目覚ました時の言い訳考えとかなな、チリはぐるりと体を反転させると{{kanaName}}の背中に両手を回して魅惑的な彼女の胸へ顔を埋めてまぶたを閉じた。