最近イキリンコの鳴き声に悩まされている夢主とその愚痴を口実にしたいチリ ※チリ視点
「本っ当に最悪なんだから!」 ――その話、もう何べん聞いたやろ。 険しい顔をして愚痴を垂れる{{kanaName}}を宥めながら思い返す。 その話、少なくともこの一週間、話をするたんびに必ずそれを聞かされたし先週も何回か聞いてる気ぃする、何やったらその前からもちょいちょい言うとったっけか。始めは今よりもうちょい好意的に話しとって、それがいつからか苛立ちが混じるようになって、ほんで今はもはや敵愾心に満ちててちょっとヤバい気してる。せやけど、や。 「イキリンコ許すまじ……!」 この子が怒ってる相手はポケモンで、気持ちは分かんねんけど実際問題それをどうにかするんは結構骨が折れる。何せ相手は野生のポケモン、しかも移動の得意な鳥ポケモン、遠くに放ってもすぐ帰ってくるやろし本気でどうにかしよ思たら捕まえるくらいしか手が思い付かへんのやけど、数が数やからそれも無理なわけで。 「もっと可愛い鳴き声だったらわたしだってこんなに怒んないよ、ヤヤコマとかオドリドリとかなら全然許しちゃう。でもイキリンコはダメ、朝早くから煩すぎ!」 「あー、せやなぁ。でもイキリンコは鳴くのが仕事みたいなとこあるし」 「チリちゃんはあの騒音を知らないからそんな事言えるんだよ!」 普段はまん丸で可愛らしい目がギロリと睨んでくる。いやいや、チリちゃん睨んでもしゃあないやん。チリちゃんいっこも関係ないんやし。 とは言えイキリンコの騒音問題はちょこちょこ耳にする話だった。ほんでも街中に住むポケモンあるあるで、音や臭いの問題は人間側が慣れるか我慢するかが暗黙の了解になっている。今回の『春になって急に増えたイキリンコの鳴き声問題』もその一つ、イキリンコ達が程良く巣立ってくれるまで我慢するしかない。下手に追い出そうとしてイキリンコ怒らせたら逆に迷惑行動増えるからな。 せやから、どれだけ愚痴を言ったところで時間の無駄でしかないねん。一応あっという間に解決してみんなハッピーなれる案がない事はないんやけど、けどなぁ……。まあ、しゃあないか。 「あんな、チリちゃんはここぞって場面はビシッと決めたい思てんねん」 今朝の騒音を思い出してぷんすか怒る{{kanaName}}の肩に手を置く。じいっと見つめるとそんなチリちゃんを訝しむ目が返ってきた。黙ってもう暫く愚痴を聞け、と普段の可愛らしい顔に似つかわしくないトゲトゲした表情をしとる。でもせやからこそ今言わなあかんねん。 「このままやと理由がイキリンコになってしまうんやけど、自分はそれでええの?」 「…………うん? 何の話…?」 「何、って……そら同棲の話に決まってるやん」 「は、え、えぇっ?!」 ぽかんとした顔が一瞬にして真っ赤になって、ただの愚痴が意味を持つ会話へと変わってく。 その時遠くからイキリンコがけたたましく鳴く声が聞こえてきた。たしかにアホほど騒がしくて一日の始まりに聞く音にはには不向きや。それでも、今だけは全然気にもならなかった。