【つかむ願い星】

 全力を出して戦った後の食事はいつも以上に美味しい。
 数えるのも面倒になったリーグ挑戦を終えたわたしはカフェテリアで野菜たっぷりのカレーを食べていた。向かいに座るダイゴも同じカレーを食べている。いつも最後の二択で迷うわたしが、今日はカレーに即決したからだろう。
「ラグラージの動きが前よりすごく良くなっていたね」
「でも負けたけど」
 ダイゴの言葉にちょっと意地悪く返すと「だってボクの方が強いからね」ニヤリと悪戯っぽく笑われた。自信に満ちた笑顔に少し呆れて、けれど同時に胸が高鳴る。誤魔化すようにスプーンにたっぷりのカレーを掬ったら熱いルーで舌がヒリヒリした。
「ダイゴとカレーを食べてると旅のことを思い出すね」
 ジムバッジを集めてホウエンを旅したあの頃はすっかり遠い過去になっていた。その間にダイゴはさらに実力をつけて強くてすごいチャンピオンになって、わたしも通っていたトレーナーズスクールで授業をする側になっていた。
 それでもわたしとダイゴは変わらず恋人なんだから、あの日ダイゴと出会ったのは運命だったのかも……なんて可愛らしいことを思ってみたり。あっ、そういえば。
「流星群、結局見れてないね」
「あぁ、そうだったね。たしか近い内に見れるはずだよ。{{kanaName}}、一緒に見に行こうか」
 先にカレーを食べ終えたダイゴが口元を紙ナフキンで拭く。綺麗な所作に思わず見惚れてしまう。
 こういうちょっとした仕草で目の前の彼が大企業の御曹司だということを思い出す。御曹司で格好良くておまけにポケモンまで強い、すごい人間なんだと。
 そんな、付き合う相手が履いて捨てるほどいそうなダイゴが選んだのがわたしなんだから、やっばり運命ってあるのかもしれない。
「今度こそ晴れてほしいね」
「そうだね。あっ、急に石探しに行っちゃダメだよ」
「うーん……、善処するよ」
 見つめ合っていた視線が逸れる。この様子じゃ今回も見れないかな、わたしは少し大げさにため息を吐いて残りのカレーをスプーンで掬った。


 ところでここはリーグ内のカフェテリアで、ここで食事をするのは当然リーグの職員。それにこのカフェテリアは一般開放されておらず、関係者以外が食事をすることはまずない。たまに取引先の人が利用することもあるらしいけど、それも滅多にないのだとか。
 なのにわたしはリーグに挑戦する度に連れて来られてお昼を食べている。ダイゴは「職員以外利用禁止って訳じゃないから大丈夫だよ」と笑うけど、全然大丈夫じゃない。今日もリーグ職員の視線が遠慮がちに、けれど興味津々にこちらを向いているんだから。
 わたしがダイゴの恋人だというのはリーグでは周知の事実だった。なんたって最初の挑戦でダイゴと思いきり抱き合っているし、ダイゴも隠そうとしないから。
 チャンピオンがそんなので大丈夫なのかと心配になったけど、そこはダイゴの人柄のお陰か受け入れられているみたい。だから今こちらに向けられている視線も暖かいものばかり、刺々しい視線は感じたことがない。
 それでも、沢山の視線はどうしても気になって落ち着かない。わたしは寂しそうな顔をして引き留めようとするダイゴから視線を逸らしてそろそろ帰ると宣言した。
「もう少し一緒に居たいけど仕方がないね」
 いつもはもう少し食い下がるダイゴが今日は珍しくあっさりと引いた。意外な反応にびっくりしたけれど、ダイゴもやっとわたしの気持ちが分かってくれたみたい……
 なんてほっとしていたら、
「ねえ{{kanaName}}」
 隣を歩いていたダイゴがわたしを呼んだ。なぁに、と顔をダイゴに向ける。すぐ目の前にダイゴの顔があって次の瞬間、唇が塞がれる。
 エントランスに続く廊下はカフェテリアのような賑わいこそないけれど無人でもない。チラチラとわたし達を見ていた職員が驚いて慌てて目を背けた。
「ダ、ダイゴ!」
 わたしは赤くなった顔でダイゴに詰め寄る。触れるだけのキスだったけれど恥ずかしくてたまらない。
 けれどダイゴは気まずそうに通り過ぎる男性職員を一瞥すると、満足そうに唇に弧を浮かべて笑った。
「今日のキスは美味しいね」

* * *

「では、どうしてわざわざリーグに行ってダイゴさんとポケモン勝負を?」
 ツツジちゃんが不思議そうに訊ねる。よく見ると彼女の瞳は好奇心でキラキラ輝いていて、到底はぐらかせそうにはなかった。


 わたしの母校であり職場でもあるトレーナーズスクールは定期的に腕の立つ人を呼んで特別授業を行っている。カナズミジムのジムリーダーのツツジちゃんもその特別講師の一人で、今日彼女に来てもらったのも、来週の授業の打ち合わせだった。
「では当日も宜しくお願い致します」
 深々と頭を下げるとツツジちゃんも同じように真面目な顔で頭を下げ、背筋をピンと伸ばすと「ふふっ」と恥ずかしそうに笑った。
 ツツジちゃんとは顔を合わせる機会も多く、おまけにダイゴとも石友だからすっかり友だちになっていた。だから大真面目に振る舞うとついつい吹き出してしまうし、打ち合わせが終わってもお喋りはすぐには止まらない。今日はわたしのリーグ挑戦の話に花が咲いた。
「{{kanaName}}さんってすごいですよね」
 散々な結果だったと自嘲気味に話したつもりだったけれど、ツツジちゃんはいたく感心したようだ。挑戦は誰でも出来るんだから何もすごくないよと言っても「そんな事ありません」と首を振る。
「多くの人がどこかでチャンピオンの夢を諦めてしまうのに{{kanaName}}さんはずっと挑戦されてますから」
 尊敬の眼差しがわたしを見つめる。その純粋な瞳がひどく眩しくて心苦しい。だってわたしはそんな理由でリーグに通っている訳じゃない。あの強いダイゴを倒すなんて、夢の中じゃなきゃ難しいんだから。  けれど事実を伝えるとツツジちゃんは残念がるに違いなくて。困ったな、思わず眉間にしわが寄る。
「あら、もしかして何か違いまして?」
 どうやらわたしは相当険しい顔をしていたみたい。ツツジちゃんが困ったように眉を下げてしまった。今さら誤魔化せそうにもない。言うしかない。
「あのねツツジちゃん、わたしがリーグに挑戦してるのはチャンピオンになりたいからじゃないの」
 鮮やかな赤い瞳がぱちぱちと瞬きをする。そして少し遅れて「えっ」と驚きの声が上がった。
「では、どうしてわざわざリーグに行ってダイゴさんとポケモン勝負を?」
 ツツジちゃんの疑問はもっともだ。わたしが逆の立場でも絶対に聞き返す。
 でもだからこそ、理由を言いづらい。
「それは……ダイゴくんが強いのを確かめるため、だよ」
 好奇心に満ちた顔がぽかんと間の抜けた顔になる。聡いツツジちゃんならこの言葉で納得してくれないかな、と淡い期待を抱いていたけどやっぱり無理みたい。恥ずかしいけどちゃんと話すしかない。
「前に『強いダイゴが好き』って言ったことがあるの。そうしたら『じゃあ直接リーグに確かめに来て』って言われて……それが今も続いてるだけで、チャンピオンになる夢はとっくに諦めちゃってるよ」
 だってあの人、強すぎるんだもん。わたしはそこまで言うとため息を吐いた。
 こんな下らない理由でツツジちゃんはさぞかしがっかりしただろう。わたしは恐る恐る彼女の様子を伺う。
 けれど予想に反してツツジちゃんは頬を赤らめキラキラと目を輝かせていた。その顔は休み時間に恋バナを楽しむ女の子にそっくりで。
「それってつまり……デートじゃありませんの?」
「えっ?」
「実はわたくしいつも思ってましたの、何だか惚気話みたい、って」
「なっ……いつもそんなこと思ってたの?」
 ツツジちゃんが優等生らしからぬ意地悪そうな笑みを浮かべてニヤニヤしている。いつも楽しそうに聞いてくれていると思っていたのに、そんな風に思っていたとは。
 そういえばいつもバトルの状況よりダイゴの様子に興味を持っていた気がする。なるほど、惚気話だと思われていたからなんだ。わたし、変なこと言ってないよね。今さら恥ずかしくなる。
「{{kanaName}}さんって本当にダイゴさんのこと好きですよね」
 とっても素敵ですわ。ツツジちゃんが楽しそうに笑う。
 一体どうしてこんな話になっちゃったんだろう。まさかツツジちゃんがこんなに恋に興味を示すなんて思ってもいなかった。そういえばダイゴもそうだった。恋愛なんて興味ないって態度だったくせに……!
「あっ、今ダイゴさんのこと考えましたでしょう? どんな事を考えていらして? ぜひ聞かせてください!」
 しまった! 慌ててツツジちゃんに意識を向ける。ツツジちゃんの瞳は好奇心ですっかりギラついている。これは非常にまずい。
 わたしがこの後ツツジちゃんをスクールから追い出すのにひどく苦労したのは、言うまでもない。


 今日は久しぶりのお泊まりデート。いつもより入念に体を洗ってこの日の為に買ったダイゴ好みの下着を着けてダイゴの待つリビングへ向かう。
 ダイゴが仕事を持ち帰っていたから少しゆっくりお風呂に入ったけど、もう終わっているかな。少しソワソワしながらドアノブに手を掛けると話し声が聞こえた。電話をしているみたい。邪魔をしないように静かにドアを開ける。
 わたしに気付いたダイゴと目が合った。にこりと笑う。
「ふふっ、うん……××、それじゃあ」
 ダイゴは電話を切ると「ボクも入ってくるよ」わたしの頬にキスをしてリビングを出て行った。
 一人になったわたしは、さっきまでダイゴが座っていたソファに倒れ込んだ。浮かれていた心が一気に黒く塗り潰されていく。
 こんなの気にしちゃだめ。モヤモヤを追い出そうと大きく息を吐いてみる。けれど、心はちっとも晴れなかった。
 ダイゴはずいぶん楽しそうに笑っていた。旅の最中も仲良く電話をしていたけど、今も連絡を取ってるなんて知らなかった。こんな夜遅くに、しかも彼女の家に居るのに電話に出るほどの仲だとも、全然知らなかった。
 別にダイゴの交友関係に口を出したいわけでも、浮気を疑ってるわけでもない。ダイゴがわたしのことを大事にしてくれているのは身をもって分かっているから。
 分かってる。けど、それでも時々は嫉妬や不安に襲われることだってあるわけで。特に××はダイゴがスクールで仲良くしていた女の子だから、どうしても、どうしても気になってしまう。
 だからわたしはつい、
「ねぇ、もしも119番道路で会ったのが××だったら、××と一緒に旅してたの?」
 お風呂から上がってすっきりした顔のダイゴに小さな不安をぶつけてしまった。ダイゴはわずかに首を傾げ、けれどすぐに穏やかに微笑んで首を振った。
「してなかったよ」
 もしかしてそんな事を気にしてたのかい。ダイゴが湯上りで火照った頬を擦り寄せる。わたしの不安をよそに嬉しそうに笑っていて、何だか腹が立ってくる。わたしの勝手な不安だけど、それでも本気で不安なのに。
「{{kanaName}}じゃなきゃ誘ってなかったよ。信じてほしいな」
 そう言ってダイゴは抱きしめる力を一層強めた。ぴったりとくっついた体からダイゴの鼓動が響く。少し駆け足のそれに、わたしの心臓も加速していく。不安がゆっくりと溶けていく。
 けれどふと疑問が浮かぶ。
 今の言葉が嘘とは思わない。でも、それじゃあダイゴは一体いつ……。
「ところで、次はいつ挑戦しに来てくれるのかな」
 ダイゴがわたしに手を重ねる。楽しそうに訊ねるダイゴはわたしの挑戦を何だと思っているんだろう。そう気軽に再挑戦なんて出来るわけないのに。
「もう、デートじゃないんだから」
 甘えるように握られた手を払ってそのままダイゴの体を引き剥がす。ダイゴが驚いて、失礼だと言わんばかりに顔をしかめると、
「ボクは真剣に{{kanaName}}と勝負したいだけだよ」
 ツンと唇を尖らせた。
 けれど少し考え込んで照れくさそうに笑う。
「でも楽しみにしているのは事実だから、デートになるのかもしれないね」
 ああ、もう。ツツジちゃんがそう言ったからってデートなんて言葉を使うんじゃなかった。変に意識しちゃって当分リーグに行けそうにない。
 恥ずかしくて赤くなる顔をダイゴから隠す。けれど隣から伸びた手がわたしの頬に添えられて、血色の良い唇がわたしの息を奪った。

* * *

 スクールの教壇に立っていると色んなものが見える。授業中の居眠りはもちろん、こっそり回される手紙も好きな子を密かに見つめる視線だってよく見える。バレてないと思っている行為は大抵が見て見ぬふりをされているのだ。
「わたし達の時はどうでした?」
 休憩時間に声を掛けたのはスクール時代の担任でもあるベテラン講師。彼女は穏やかな顔で少し思案して、そして包容感に満ちた笑顔でこのささやかな雑談に答えた。
「そうねぇ、ツワブキ君が貴女のことよく見ていたのに貴女はちっとも気付かなくて……もどかしかったわねぇ」
「は、えっ、変な冗談やめてくださいよ!」
 突拍子もない言葉に思わずウソだと返す。
 けれどかつての担任は微笑んだまま、それどころか「ツワブキ君、貴女と付き合えてさぞ大喜びだったでしょう」とまで言う。
 でもそんなの有り得ない。だってあの頃のわたし達は本当にただのクラスメイトに過ぎなかったんだから。
 けれど、もし今の証言が本当だったなら。
 わたしを覚えていたのも、ヒワマキまで一緒に行こうと誘ってくれたのも納得ができる。
 できるけど、やっぱり信じられない。だって、好きな子のピンチに颯爽と現れて両想いになるだなんて、この後に続く台詞はただ一つ、『二人はいつまでも幸せに暮らしました』しかないじゃない。それってつまり……。
 その時、ポケナビにメッセージが届く。
『少し遅れそうだから先にヒワマキに行ってて』
 ちょうど今晩が流星群のピークで、前に話した通りダイゴと見る約束をしていた。わざわざヒワマキまで行くのはダイゴの提案で、わたしもどうせ見るのならヒワマキが良いと思っていた。
 今の話、後で会った時に本人に聞いちゃおうかな。わたしは手早く返信をすると、自然とニヤける頬をぐっと引き締め次の授業へと向かった。


 空には雲一つなく、天体観測には最高の夜だった。わたしはダイゴに連れられ119番道路にある小高い丘にやって来た。かつてこの道を通って旅をしたのだから当然なんだけど、この場所に見覚えがあった。そうだ、たしかあの日もここで見ようとしていたんだ。
 確かめるように先に腰を下ろしたダイゴに視線を向けると「今日は無事に見れそうだね」嬉しそうな笑顔が返ってきた。わたしを見つめるアイスブルーの瞳は、夜空の星に負けないくらいキラキラと輝いている。
 何度も見ているはずなのに、今日の瞳はとびきり綺麗に見えて心臓が大きく跳ねた。それが何だか恥ずかしくて、どすんと隣に座ると誤魔化すように空へと顔を上げた。
 その時、空に星が流れる。
「ねえ、今のっ、ダイゴも見た?」
 流れ星を見つけた幸運に心が踊って、反射的にダイゴの肩を揺さぶっていた。でもダイゴはわたしと違って空を見ていなくて、星屑を閉じ込めたように煌めく瞳はじっとわたしを見つめている。その頬はうっすら赤らんでいて、何故か緊張した時のように唇が直線を描いていた。
 ダイゴが何だかおかしい。どこがと問われると上手く言葉に出来ないけれど、とにかくいつもと何かが違った。そのせいでわたしまでドキドキしてくる。少し落ち着こう。
 また空を見上げる。澄んだ空は遠くの小さな星までよく見渡せた。
「流れ星ってすぐに消えてしまうから、次のを見逃したくなくてずっと空を見てしまうよね。それって、何だか恋に似てると思わないかい?」
「えっ?」
 驚いてまたダイゴに顔を向ける。目が合う。柔らかい語調とは対照的に眼差しは真剣で、自然と胸が高鳴る。
 わたしは以前にもこの瞳に見つめられたことがあった。あれは、そう、ダイゴと初めてキスをしたあの夜だ。
「ボクにとって偶然見たきみの笑顔が流れ星だったんだ。ほんのわずかな時間だったけれど鮮烈で強烈に心を奪われて……気付いたら{{kanaName}}の事を、ずっと目で追っていた」
「ちょっと、何急に……」
 突然のダイゴの言葉に思考が追いつかない。わたしを射抜くアイスブルーの瞳はやけどしそうなほど熱い。
 耐えきれず俯くと「{{kanaName}}」名前を呼ばれ、ダイゴの手がわたしのあごを掴んだ。
 まっすぐに見つめられる。瞳を、逸らせない。
「好きだよ、{{kanaName}}」
 星空は遠く、視界がダイゴでいっぱいになる。瞬きをしたら吐息が肌に当たるほどダイゴの顔がすぐ傍まで近付いて、瞳を閉じると唇が触れ合った。ダイゴと初めてしたキスも、こんな風に一瞬触れるだけのキスだった。
「……なんて、今さら格好付けて告白しても遅いかな」
 目を開けると、ダイゴが眉を下げ気恥ずかしそうに笑っていた。ただいつもと違って、視線はちらちらとわたしを窺っては逸らすを繰り返している。こんなに自信のないダイゴは初めてかもしれない。何だかおかしくて、ふふっと笑ってしまった。
「遅すぎだよ」
 珍しいダイゴが見れたことへの興奮と、唇に残る柔らかな感触、そして愛されている実感が笑い声となって溢れ出す。最初はくすくすと囁くような声が、だんだん堪えきれなくなって大きな笑い声になっていく。それには流石のダイゴもムッとしたらしく、
「だってきみが! {{kanaName}}がなかなか流星群を見たいって言わないから……きみも悪いんだよ」
 唇を尖らせ、ふいと顔を背けてしまった。
 ダイゴでも上手くいかないと拗ねるんだ。妙な感心を覚えながら呼吸を整え「ごめん」と謝った。笑ったのは照れ隠しでもあるんだから、そんなにへそを曲げなくてもいいのに。
 こっちを向いてくれないダイゴに寄りかかる。ダイゴは何も言わず、わたしも何も言わなかった。
 ぼんやりと空を眺める。流れ星が煌めいて、ようやくダイゴがわたしに視線を戻した。
「ボクはきみが大好きなんだ」
 バトル開始前のような、静かに燃える情熱が瞳の中に見える。ダイゴらしいその顔が、昔から好きだった。心地よい緊張が鼓動を加速させていく。
「だから、流れ星を探すようにきみの魅力を見付けるのはとても楽しいんだ。本当だよ。でも、」
 ダイゴがわたしの左手を取る。
「夜、空を見上げればいつでも会える星も、とても魅力的だと思わないかい?」
 夜風で少し冷えた指先が、ダイゴの熱を吸って温まる。
「ボクはきみを…、{{kanaName}}を、愛してる」
 薬指に何か冷たいものが当たる。
 ちょうどその時、一際強い光を放つ流れ星が夜空に白い光の筋を描いて地平線へと消えていく。
 視線を落とすと左手で何かが光った。あの流れ星のようにきらりと輝くダイヤモンドだった。
「{{kanaName}}、ボクの隣でずっと輝いてくれないかい?」
 期待を込めて膨らませた空想が今、現実になって左手の薬指で眩しく煌めいている。
「わたしまだ、流れ星に願い事してないのに」
 叶っちゃった。
 涙で揺らめく瞳で微笑んだらダイゴの胸の中に抱きしめられた。夜風で冷えたスーツの奥から熱い鼓動が響いてくる。わたしと同じくらい、速く、大きく拍動している。心地良くて、幸せな温もりだった。
 顔を上げるとうっすら赤い顔のダイゴと目が合った。愛おしさが込み上げる。指輪を受け取った左手でダイゴの頬を撫でると、ダイゴの瞳も揺らめいた。
「わたしもダイゴとずっと一緒に居たいと思ってるよ」
 そう言って唇を押し付ける。今までで一番幸せな味のするキスだった。